広告表現でよく問題になるのは、「嘘を書いた」ケースより「言いすぎた」ケースです。
事実に基づいていても、実際より著しく優れていると受け取られる表現は、景品表示法の不当表示にあたります。
そしてもう一つ重要なのが、「法的にOK」と「媒体審査を通る」は別物だという点です。
媒体の審査基準は法令より厳しいことが多く、法律上は問題のない表現でも審査で落ちます。
この記事では、実務で頻出する論点と、制作前に踏むべき確認手順を整理します。
この記事の要点
- 景表法の2大論点は優良誤認と有利誤認
- 「※個人の感想です」は免罪符にならない
- 化粧品は56項目の効能範囲内、健康食品は効果を一切言えない
※この記事は実務上の注意点を整理したものであり、法的助言ではありません。
リスクの高い案件は専門家のレビューを受けてください。
1. 景品表示法の2大論点

図1:どちらも「実際より著しく良く見せる」ことが問題になる。
この2つは、全商材に共通して適用されます。
美容や健康に限った話ではありません。
| 種類 | 何が問題か | 例 |
|---|---|---|
| 優良誤認 | 内容・品質を実際より著しく優良と誤認させる | 実績の裏付けがない「業界最高水準の品質」 |
| 有利誤認 | 価格・取引条件を著しく有利と誤認させる | 実態のない「通常価格」からの割引表示 |
「著しく」がポイントです。
多少の誇張表現がすべて違反になるわけではなく、その表示がなければ購入しなかったであろう水準の誤認が問題になります。
2. 実務で頻出する4つの論点
No.1表示
「売上No.1」「顧客満足度No.1」は、合理的な根拠がなければ不当表示になります。
消費者庁が2024年に実態調査報告を公表しており、監視が強化されています。
問題になりやすいのは次のケースです。
- 自社アンケートによる「イメージ調査」で作ったNo.1
- 調査対象・期間・出典が明記されていないNo.1
- 実際の売上ではなく、印象を聞いただけの調査結果
使う場合は、調査の客観性と出典の明記が必須です。
打消し表示
小さな注釈をつけても、全体として誤認させれば違反になります。
「※個人の感想です」「※効果には個人差があります」を入れれば何を書いてもよい、という理解は誤りです。
消費者庁は打消し表示について実態調査を行い、強調表示に近接した位置に、同程度の視認性で表示する必要があるとしています。
画面の隅に小さく置いた注釈は、そもそも読まれていないと判断されます。
比較広告
他社との比較は禁止されていません。
ただし、次の3つを満たす必要があります。
- 実証されたデータに基づいていること
- 数値を正確に引用していること
- 公正な方法で比較していること
都合の良い条件だけを切り取った比較は認められません。
ステルスマーケティング規制
2023年から、広告であることを隠した表示は景表法違反となりました。
インフルエンサーへの依頼投稿や、自社関係者によるレビューには「PR」「広告」の明記が必要です。
依頼した側の責任になる点に注意してください。
3. 薬機法:化粧品の場合
化粧品で言えるのは、業界団体が定めた56項目の効能範囲内だけです。
範囲内の表現例としては「肌にはりを与える」「うるおいを与える」などがあります。
言い換え例
| NG表現 | 言い換え |
|---|---|
| 若返り/肌再生 | 年齢に応じたお手入れ |
| シミが消える | メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ(薬用のみ) |
| アンチエイジング | エイジングケア(年齢に応じたお手入れの意味) |
| 治る/治療 | (使用不可。化粧品に治療効果は認められない) |
「薬用」と表記できるのは医薬部外品だけです。
一般化粧品で使うと、それ自体が問題になります。
4. 薬機法:健康食品・サプリの場合
一般食品扱いのため、疾病の治癒・予防や、身体機能の増強は一切表現できません。
化粧品より制約が厳しく、「効きそう」と思わせる表現の大半が使えないと考えてください。
| NG表現 | 言い換え |
|---|---|
| 血圧を改善する | (疾病への効果は表現不可) |
| 飲むだけで痩せる | ダイエット時のエネルギー補給に |
| 免疫力アップ | 栄養補給をサポート |
| 疲労回復 | (身体機能への効果は表現不可) |
機能性表示食品・特定保健用食品(トクホ)は例外です。
ただし、届出・許可された機能のみ、届出した表現のまま記載できます。
言い換えたり強めたりすることはできません。
体験談とビフォーアフター
体験談でも効能の保証はできません。
「※個人の感想です」を添えても免罪されません。
ビフォーアフター写真も、効果を保証する使い方は問題になりやすく、媒体審査でも落ちやすい表現です。
5. 媒体審査との違い

図2:法令をクリアしても、媒体審査は別の基準で判断される。
「法的にOK=媒体審査もOK」ではありません。
各媒体は独自の審査基準を持っており、法令より厳しいことがほとんどです。
とくに落ちやすいのは次のような表現です。
- コンプレックスを刺激する表現(体型・容姿・年齢など)
- 断定的な効果の表現
- 不安を過度に煽る表現
- ビフォーアフターの比較画像
さらに、媒体AでOKでも媒体BでNGということが普通に起きます。
そのため、審査落ちした表現は社内に記録して蓄積してください。
どの媒体で、どの表現が、なぜ落ちたのか。
これを残しておかないと、同じ失敗を繰り返します。
6. 制作前のチェック手順
固定のNGワードリストに頼らないでください。
商材ごとに適用される法律が違うため、リストだけでは漏れます。
制作物(LP・バナー・動画・記事)に共通して、次の順で確認します。
- ☐ 商材に適用される法規制を特定する(美容・健康なら薬機法、金融なら関連法規)
- ☐ 優良誤認にあたる表現がないか
- ☐ 有利誤認にあたる表現がないか(価格・期間・条件)
- ☐ No.1表示があれば、調査の出典・期間・範囲を明記しているか
- ☐ 打消し表示が、強調表示に近接し同程度の視認性になっているか
- ☐ PR・広告であることの明記が必要な形態ではないか
- ☐ 体験談・ビフォーアフターの使い方が効能保証になっていないか
- ☐ 各媒体の審査基準に照らして問題ないか
リスクの高い商材(美容・健康・金融など)は、専門家のレビューを受けてください。
法令違反は課徴金や措置命令につながるため、確認コストをかける価値があります。
まとめ
- 問題になるのは「嘘」より「言いすぎ」。 優良誤認と有利誤認が2大論点
- 注釈は免罪符にならない。 打消し表示には視認性の要件がある
- 法令と媒体審査は別物。 落ちた表現は記録して社内に蓄積する
広告表現の判断は、クリエイティブの品質と同じくらい運用の成否を左右します。
バナーの作り方については「成果が出るバナーの作り方」でも触れています。
この記事について
- 執筆:合同会社Nexum(広告運用・Web制作支援)
- 最終更新:2026年8月28日
- 制作方法:消費者庁の公式資料を一次ソースとして参照し、薬機法の専門解説および自社の広告制作業務における確認手順を加えて構成しています。
- 免責:本記事は実務上の注意点の整理であり、法的助言ではありません。個別の判断は専門家にご確認ください。
